コーチング事例集

 
















Q1 「もしも1000万円使えるとしたら何に使いますか?」

 某アパレルチェーン店を3店舗経営するオーナーが相談にいらっしゃいました。今後店舗をさらに拡大して売上げ拡大をしたいがこのままで本当に大丈夫なのか不安がある。ただ何が問題なのかも自分ではわからないと。経営戦略シート等のツールを出しながら考えを整理し、少しづつすっきりとした表情になってゆくのがわかりました。最後に、

「もしも1000万あったら何に使いますか?」

と質問したところ、少し間をおき

「会議室を作りますかねぇ」

と。社員はすでに10名近くいるので普通に会議室があるのかと思いきや、いつも適当に立ち話しや座ったまま書類越しに対話するくらいだと。渡した経営シートに数字を埋めただけでは目標達成はできません。短期、中期、長期のマイルストンをおきながら定期的な振り返りが必要。そのためには大きくなくてもホワイトボードのある会議室は必要です。そのことを伝えると

「わかりました!私にたりないものはそこなんですね!学校卒業し会社員の経験のないままこのお店に入ったので、会議って物がどんなのかわからなかったんです。たしかにそうやって会議して従業員の気持ちや課題を確認してゆけばいんですよね」

逆にそれなくして成功していることに驚きさえ感じましたが、それだけにそのお店の伸びしろはかなりあるなと感じました。

Q2 「10年後、IT導入で成長している会社があります。なぜでしょう」

某建設下受け会社の社長の生産性向上の相談を受けておりました。IT導入補助金を使用した現場の効率化を提案したところ、

「ITはちょっと苦手でしてね・・・」

とおっしゃいます。50代以上の経営者の典型的な反応です。新型コロナでITに苦手意識を持っている人は今後の競争では圧倒的に不利になることを説明しても腰が浮きません。そこで

「もしITを苦手としている経営者の会社が10年後何だかの形でITを導入して発展しているとしたらどんな文脈でしょうか?」

と聞きました。そうすると相談者はしばらく考えた、

「おそらくその会社は事業承継して承継した方が積極的に取り入れてるのだと思います」

と回答されました。そこで私は

「御社がその会社であることを想像することは難しいでしょうか」

と聞くと

「わしはまだ50じゃけー、承継は当分先の話」

と言います。そこで5Gの世界が来て下請けと元請け、そして発注者らとのコミュニケーションが普通に動画でやり取りされる近未来社会について説明しました。説明しながら私自身にもアイデアが浮かんできて最終的には、今すぐ承継しないまでもまずは承継する予定の息子さんに5G研究会を立ち上げさせ、その中に元請け会社の若手に呼びかけ、いまから5Gをテーマとした息子さんのネットワーク形成に取り組むことを提案したところ、重い腰がようやく浮きました。

自分への質問は感情が優先されますが、第三者を想定した質問をすると合理的に回答します。このギャップに気づかせることができるのもコーチングの醍醐味です。

Q3 「理想の一日とはどのような日でしょう」

地方にある人気のパン屋さん。メディアにも何度か取り上げられ、休日はもちろん、平日も列ができることがあります。年間を通せば経営は成り立つのですが、悩みは、

1)近くの観光スポットのイベントによってお客様の数が上下し売上げが安定しないこと。
2)店の前で列ができるとき外からくる一見さんが多いので花や果物をとられたりすることが多い。
3)店を手伝う妻が腰を悪くしているので長時間回転することが困難になっているとのことでした。いろんな助言をした後に、

「理想的な1日とはどんな状況でしょうか」

と質問すると、

「1日確実に人気のランチセットが100セット出ることです。そうすると売上げも安定するので仕入れも安定します。スタッフのシフトも組めますから欲出さなければ夕方に閉めることができます」

とのこと。そこで提案したのが

「であればセットメニューを1日100セット限定にし、そこを売りにすれば良いのではないでしょうか。すでに知名度はあるので違和感はないでしょう。また、その限定を“ただいま○○セット注文あり。残りxxセットのみ!”とHPに表示します。これで行列が緩和され、待ち時間に庭をいたずらされることも解消されます」

と。すると、

「確かにそうすると妻のシフトも計算できるので負担を軽減できる可能性ありますね」

と、ひざを打っていただきました。持続化補助金、IT導入補助金の説明をしたことはいうまでもありません。人は現実から未来を考えます。現実から考えと現実の“縛り”から発想するので新しい打開策は出てきません。コーチングでは未来から逆算させることで多くの気づきを与えることができます。

Q4 「いつ創業しますか?」

カウンセリングの経験が豊富な相談者がカウンセリング事業で創業に向けた助言を求めにやってまいりました。相談者は多くの資格を所有しておりやりたいこと、できることも無数にあります。ありすぎて何をどこから手をつけて良いのかわからなくなったとのこと。創業の目標を持って1年が経過していました。

私は相談者の経歴や実績を見た瞬間にすぐにでもお客がつきそうな気がしたので、いま相談者に最も必要なのは「決めること」だと感じました。つまり「開業したい」という願望ではなく、「○年○月までに開業する!」と覚悟を決めることです。後ろが決まれが自ずといつまでに何ができていなければならないかが計算できます。するとその期限までにできることは限られてくるので何を捨てなければならないかという決断がしやすくなります。すべては「覚悟」からスタートします。

コーチングでもっとも焦点化するのはモチベーションです。モチベーションが高ければその後の行動の選択肢は無数に広がります。この「覚悟」を持った人間と単なる「希望」しか持たない人間との差は「嫌い」が選択肢に入るかどうか。「覚悟」のある人間は嫌いな人に頭を下げることができます。嫌いな場所に行くことも、嫌いな本を読むこともできます。選択肢が広がれば成功する確率は格段に高くなります。以後、相談者のセッションでは、「xxします!」という言葉が多数出てきて、すさましいスピードで創業に向けた準備が進んでいます。

Q5 「この問題を放っておくと3年後、どんな最悪なことが起こっていますか?」

プロコーチと契約する人は高いお金を支払ってサービスを受けるわけですから本気モード全快です。しかし何度受けても無料の本拠点には、ふわふわとした悩みを持った方が相談に来ることが少なくありません。いろんな悩みを聞きますが、まずは先述の本気モードになってもらうために次のような質問をすることがあります。

「社長、その問題を放っておくと3年後どんな最悪なことが起こっていますか?」

組織間の対立がなんとなく問題だと思って相談に来た方は、

「責任の所在が不明なまま進んでしまうのでお互いにけん制して受動的になり、結果が出るのが遅くなります。最悪、何も進まない可能性すらありますね」

と。

「それは大変ですね。どうしましょうか」

つづけて質問をすると、

「すぐに両部署の責任者を集めてミーティングします。多少荒れることはあっても避けては通れないでしょうね」

とおっしゃいました。経営者にとって組織間の対立はできるだけ回避したいところ。しかし組織というのはメンバーが本気になればなるほど対立の頻度は高くなるものだと思います。逆に対立がない組織はみな受動的な作業しかしておらず大変危険な状況であるともいえます。そのような説明をした後、最後にこう言ってモチベートしました。

「社長、対立大いに結構じゃないですか。彼らが火花散らしているのを見てうるうるしないでくださいよ!(笑)」。

承認1 「半年前からしたらずいぶんと進化してますよ!」

最後に私(佐々木)自身の事例をひとつご紹介します。コーチングで重要視されるコミュニケーションに「承認」があります。私自身、教育業界に一石を投じるべく3年前に教育ベンチャーを創業しました。しかし教育業界はきわめて保守的で私の提唱する教育観をそのまま受け入れてくれる学校はほとんどありませんでした。現場教員が上げてくれても管理職で拒否される。逆に管理職で降ろしても現場で拒否される。その連続です。全力で臨んでいるので何度も拒否されると心が折れます。あるセッションで私は次のように報告しました。

「教育業界の保守性は想定していた以上のものです。これは軌道修正する必要があるかもしれません」

力のない言葉で状況を報告するとコーチは次のようにフィードバックしてくれました。

「たしかに、佐々木さんの想定していたようなスピード感では進んでいないことは確かですね。でも佐々木さん、私がコーチを担当した半年前からすればかなり進化してますよ!だって、当初は校長にも話があがらなかったんじゃないですか?お試しだからといって無料でコーチングをすると言っても受けてくれる教員いなかったんですよね。それが今は両方叶ってるじゃないですか。大丈夫ですよ。そんな保守的な教育業界を佐々木さんはわずか半年でそこまで変えてきてるんですよ!」

と。確かに自分をメタ的に認知すると(客観視)進捗していることが理解できました。それからもコーチを信頼し、歩みを進めることができています。このようにクライアントを客観視させてモチベートするのもコーチの役割です。